君と花を愛でながら
『へえ……』



と相槌を打ったものの、それ以上言葉もなく。
視線を絡ませたまままるで時間を止められたような錯覚。


消すつもりのないらしい煙草の先から白く細い煙が上り、風に揺れて散らばった。



『後はねえ、秘密の恋、孤独な愛、とか。
 結構色気のある花言葉だと思わない?』



にっ、と再び笑った愛ちゃんはいつもの愛ちゃんだった。



『確かに。愛ちゃんには似合わないよね』

『何おぅ!』



結構本気の平手が飛んできて危うく顔面に食らうとこだった。
今思い出しても、愛ちゃんはもうちょい明るいイメージで、やっぱりその花言葉は似合わない。


もっと儚げな女か影のありそうな男とか。


例えばこの、目の前の眼鏡堅物とか。

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