君と花を愛でながら
「片山くんも。まだここで頑張ってくれてたんだ」
「ご無沙汰してます。相変わらずこき使われてますよ」
二言三言、俺は言葉を交して彼女はすぐにマスターに近づく。
二人は暫く無言で見つめ合った後。
マスターが手にあった煙草を携帯灰皿に押し込んだ。
「信也くん。後片付けは私がやっておきますから、今日はもう上がって貰って良いですよ」
「……っす。お疲れさまです」
片づけなんて全部終わってるっつーの。
つまりあれだ。
早く帰れって意味だ。
おいおいおい。
別れた女とどうする気だよ。
マスターも案外隅に置けないよな。
なんつって。
手荷物を取りに戻って、また裏口から出るとすれ違いに中に入っていく二人。
その姿に、なんとも胃が重くなった。