君と花を愛でながら
「試す、って?」
「試しに付き合ってみない? ってこと」
言いながら、片山さんが私の腕を引いて向日葵を背にするように立たせた。
彼は私の正面に立って、太陽を遮ってくれる。
逆光で、表情がよく読み取れない。
案ずるより、産むが易しって言うわよ、と。
頭の中でお姉ちゃんの声がする。
同時に、突き放したようなマスターの声も。
『見頃になるまでに、お返事したらいいでしょう。嫌なら嫌と言えばいい』
あの時のマスターの声が、少し冷たかったのは私の気のせいだろうか。
あんなに渋っていたのにあっさりこうしてデートしている私を、今は呆れているだろうか。
「……また、意識飛んでる」
「あ、ごめんなさい」
「……返事は考えてからでもいいけどさ」
そう言った片山さんの顔が、ちょっと意地悪に見えたのは逆光で陰影が色濃く見えるからだろうか。
笑ってるのに、ちょっと怖くて。
「でも、あんまり長くは待てないから。ちょっとおまじない」
「おまじな?」
オウム返しは最後まで言えなかった。
不意に距離が詰められて、気付いた時には目の前は片山さんの閉じた瞼と前髪でいっぱいだった。