君と花を愛でながら
「向日葵は、綺麗でした?」
ぱちん。
ぱちん。
「はい、たくさん咲いてました。向日葵畑、すっごく広くて」
「それは、良かったですね」
ぱちん。
ぱちん。
「すごく暑かったです」
鋏の音の合間を探して言葉を交すせいか、会話のリズムが微妙に狂う。
「晴天でしたからね、そうだと思ってました」
その言葉が、嬉しいような哀しいような。
昨日、片山さんと出かけた私を少しは気にかけてくれたのだろうか、とか。
思い出してもなんとも思わないくらいのものなんだろうな、とか。
「一瀬さんは、何してたんですか」
「……私、ですか」
驚いたような顔をしたのは、私が仕事以外のことで一瀬さん自身のことを尋ねたことが、意外だったんだろうと思う。
多分、初めてかも。
咄嗟に聞いてしまっただけだったから、なんの心構えもなかったし、嫌な顔でもされたらとドキドキしたけれど。
ほんのすこし手元が止まっただけで、すぐに教えてくれた。
「昨日は、ずっと家に居ましたね」
「家って、ここですか?」
ぱちん。
馬鹿なこと聞いちゃった。
「そうですね、家はここだけです」
「ですよね」
案の定、当然の答えが返ってきて恥ずかしくなって顔が熱い。
だけど、それで途切れるかと思った会話を一瀬さんが継続してくれた。
「はい。見たかった洋画をレンタルしてたのでそれを見てましたよ」
「洋画……」
「変ですか?」
「いえ。なんか、難しそうなの見てそうだなって」
「アクションものですよ、普通の」