君と花を愛でながら
だけど、それを言えば私もわからない。
なんで、一瀬さんなんだろう。
悠くんの時には、自分の気持ちを不思議に思うことなんて欠片もなかったのに。
ずっと一緒に育ってきて、小さな時から悠くんは頼りになるお兄ちゃんで気心も知れてるし一緒にいて楽しいし安心できた。
話していても、会話が途切れることはないし途切れても別に気にならないし、きっと向こうも気にしない。
なのに、どうして今は一瀬さんなんだろう。
仕事以外で話しをすることなんて、ほぼない。
ただ、いつも頭の中から消えてくれない。
初めてこのカフェを訪れた時の、温かな空気や私の涙を見ないフリをする代わりにくれた、クッキーの甘さ。
乏しい表情の中に時々滲む、微かな笑顔の温もりが事あるごとに頭に浮かんで広がっていく。