君と花を愛でながら


雪さんがお店を出てすぐのこと、一瀬さんが「閉店にしましょうか」と合図を出して、私は頷いてすぐに店の外にあるプレートをひっくり返しに外に出た。


何気に駐車場や敷地内に目を走らせると、やはりもう彼女の姿も車も見当たらない。
本当に帰ったんだと、安堵する自分はとても心が狭い。


雪さんや一瀬さんに比べて、私は余りにも子供だった。



好きです、傍にいたい。
ここで働きたい、貴方と一緒に。



そう思うだけで、言葉にするだけで精一杯で。
二人の間で交わされたのだろう過去の想いや仕事の事情や、生き方の違いなど思いもよらなかった、想像もできなかった。


一つだけわかったことは、過去に二人が別れを選んだその時、互いを嫌いになったのでも恋愛感情がなくなったわけでもないことだけは、ひしひしと伝わっていた。


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