君と花を愛でながら
店に戻り閉店作業の残りを片付けて、私は雪さんから託されたシオンの花束を持ってカウンターの中の一瀬さんに声をかけた。
厨房からはまだがちゃがちゃと金属や陶器の触れ合う音がしていて、片山さんが後片付けの最中なのだろうとわかる。
「これ、雪さんからです」
シオンの花束をカウンターを挟んで彼に向かって差し出すと、一瀬さんは驚いたように目を見開いた後、苦虫をかみつぶしたように表情を崩した。
「また……嫌に意味深な花を」
「雪さんが、花言葉でコレを選んだってどうしてわかるんですか?」
私の手から、一瀬さんの手に花束が渡る。
一瀬さんが花言葉に詳しいことは知っているけれど、雪さんがそれを理由に花を選んだことにすぐに気が付いたことが不思議だった。
「元々、私に花言葉を教えたのは彼女ですから」