君と花を愛でながら
あ……。
そういえば花言葉に詳しい知人がいる、と前に言っていた。
あれは、雪さんのことだったんだ。
また一つ、雪さんの欠片を見つけて私は唇を噛む。
悔しいけれど、不思議と泣きたくなるような辛さはなかった。
今の私では、到底かなわないとすっかり心が悟ってしまっているからかもしれない。
でも、やっぱり悔しい。
私の気持ちを知ってるくせにそれを言う一瀬さんの意地悪も、何時までも消えない過去の気配も。
「どこに飾りましょうか。カウンターの隅にでも……」
だから少し、私も仕返しをしてみたくなった、だけだ。
悔しさに煽られて、花瓶を取りに行こうとする一瀬さんの腕を勢いだけで捕まえて、言葉が口をついて出た。
「一瀬さんは、どうして返事をくれないんですか」
声に出してから急に怖くなって、語尾が震えて誤魔化すように手を口許に充てる。