君と花を愛でながら

「それはわかってます」



優しい顔で、酷いことを言う、と思わず睨んでしまった。
そうじゃなくて、はっきりと玉砕させてくれない理由を聞きたかっただけだ。


あ、それとも。
今の言葉が、返事ということ?


私の追撃は呆気なく終わりを迎えたのように思えたけれど、続く言葉にそうではないと知らされる。



「貴女が雪や信也君もいる前で、私が居ないと意味がないと叫んでくれた時は少し、驚きました」



シオンの花束が、カウンターの上に置かれた。
ほっとしたのは、シオンの花が雪さんの名残で彼を過去に縛り付けるもののように思えていたからかもしれない。

< 246 / 277 >

この作品をシェア

pagetop