君と花を愛でながら
「向日葵畑、ご一緒したんでしょう? てっきり貴女は信也君と付き合うことになったのかと思っていたのに、一瞬私が必要なのだと言われているように聞こえてしまって。よくよく考えれば、店の話をしていたのですけどね」
「あっ、あれは!」
あの時のことを思い出さされてしまって、火が付いたように耳まで熱くなる。
かっとなって、勢いのままに駄々をこねたみたいで、それこそ子供の癇癪みたいなものだった。
でも。
一瀬さんが告白のように聞こえたのも、間違いじゃない。
「……店のことも、だけど。一瀬さんのことも、です」
「はい。嬉しかったんですよ、とても」
「え……」
驚いてしまった。
困らせたと思いこそすれ、嬉しかったと言ってもらえるとは思わなかったから、思わずきょとんと彼の顔を見上げたまま、固まった。
そんな私に、彼は初めて、大人の男の人の、艶然とした微笑みを向けた。
「恋愛対象に思ったことはなくても、綾さんの目が私をいつも追いかけてくるのは……好きでした」