君と花を愛でながら


言葉もなく、息を飲むしかなく、鼓動の速さに胸が痛いくらいだった。
「ひな鳥みたいだ」と揶揄されていた私の視線を、一瀬さんにも気づかれていたんだ。


恥ずかしいけれど、私を好きだと言ってくれたわけじゃないのは、わかってるのに嬉しかった。



「……その目が、信也君に向けられるのは、面白くない」

「そっ……そんなのっ」

「と、私に言う資格はないでしょう? だからお返事しませんでした」



余りの言い草に何か言い返そうと唇がせっせと動くけど、すぐには言葉も見つからない。
顔も耳も首筋もじわりと汗が滲むのがわかるくらいに熱くて、きっと私は今茹蛸見たいになっている。



「ずっ……ずるいです! そんな言い方!」



漸く出た精一杯の言葉は、自分の正直な気持ちだった。


ずるくて酷い。
突っぱねてくれるどころか、細い細い、それこそ蜘蛛の糸みたいなもので繋がれた気分だった。

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