君と花を愛でながら


ふ、と口元を綻ばせる。
そんな小さな表情にも、心臓が跳ねて忙しい。



「ずるいんですよ、大人は」



余りにもどぎまぎする私を見かねたのか、彼は色香漂う艶やかな微笑みを引込めて、ただくすくすと笑った。



「また、こども扱い」

「そんなことはないですよ」



その場しのぎの慰めの言葉で誤魔化され、話が終わってしまいそうになる。


細く残された、銀の糸。
それはきっと僅かに彼が迷ってくれた、少しは心が揺れてくれた証拠だと思っていいのかな。


そう思いたい。



「さて、花瓶、どうしましょうか」



一瀬さんの目が逸れる。


彼の言い草をまねるなら、一瀬さんの視線が私からシオンの花束に戻るのが、面白くない。
そんな過去にもう捕らわれないで。



「だったら。私が少しでも一瀬さんに追いつけたら?」



年の差はどうしたって追いつけなくても、埋められる距離はあるはず。


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