君と花を愛でながら
「寒っ」
手を伸ばしてプレートをくるりとひっくり返す。
店内は温かいから、白シャツに薄手のカーディガンを一枚羽織っただけだ。
手や顔のむき出しの肌には、それこそピリピリと刺すような凍えた空気が堪える。
この冬は、最初こそ暖冬だったけれど年を明けた頃から急激に気温が下がり、雪のちらつく日が多かった。
「あ、また」
目の前にちらついた白い色に上を見上げると、ふわふわと舞い降りる雪が店の灯りに照らされていた。
「今日は早く帰った方が良いかもしれませんね」
背後から声が聞こえ顔を振り向かせると、思っていたよりも間近に一瀬さんが立っていて、同じように外の空を見上げていた。