君と花を愛でながら
せめて、と手渡された傘は男物だった。
大きいから雪が肩にかからなくていいけど、時々風に煽られた時に少し重たく感じる。
大きな牡丹雪で、手袋をつけた手を傘の外に差し出すと白い毛糸にたくさんの雪がまとわりついた。
アスファルトに落ちたと同時に消えていく今夜の雪は、今のところ積もる気配はないけれど、急いだ方が良さそうだ。
少し足を速めた時、パパッと後ろからクラクションが鳴らされた。
「綾ちゃん、乗って。家まで送ってくよ」
横付けしてきた白い車の運転席から片山さんが顔を覗かせた。
「いいんですか? ありがとうございます」
助手席に回って乗り込ませてもらうと、まだ店を出たところだから車内もひんやりとしていた。
「すぐ暖かくなるから」と言って、片山さんがヒーターの温度調節を上げる。
「追っかけてきてくださったんですね、すみません」
「いいよ、綾ちゃんと話したかったし」