君と花を愛でながら

「苑ちゃんの通ってるフラワーデザインの専門学校に、私も二年通うことにしたんです」

「苑ちゃん? だれだっけ」

「ほら、去年の今頃よくお店に来てた、姉の友人の」

「ああ」



専門学校は苑ちゃんの家からこの店とは反対方向の駅になる為、随分長いこと会ってなかったけれど。
秋頃、進路のことで電話したら、快く相談に乗ってくれた。



「あー、びっくりした。綾ちゃんこの店辞めちゃったら、俺が帰ってくるとこなくなっちゃうからね」

「あはは、またそんなことばっかり。片山さんも春からですよね」

「うん、そう。寂しいって思ってくれる?」



くるる、とハンドルを切ってちらりと横眼で私を見て笑った。
片山さんも春から、神戸のレストランでパティシエの修行に行くことになっている。


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