君と花を愛でながら


春からは片山さんの製菓学校の後輩さんが来てくれることになったらしい。
何度か店に来て片山さんと一緒に厨房に入っているのを見かけたが、偶々忙しい時間帯だったこともありまだ話もしたことがない。


けれど、片山さんが紹介してくれたんだからきっと良い人だ。



「寂しいですよ勿論……早く戻ってくださいね」

「上っ面でも嬉しいよ」

「本当ですってば」

「ってか、昼間綾ちゃんいなくて花屋大丈夫なの? ブーケどうすんだよ」

「はい、ブーケ作れる人を新しく雇うのかと私も思ってたんですけど……」

「けど?」



驚きそうだな、と思いながら、笑いを堪えて言った。



「マスターが、作るって」

「はあ?」

「今、特訓中なんです。ほら」



膝に乗せた花束の入ったショップバッグを、運転中の片山さんにも見えやすいように広げて見せた。


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