君と花を愛でながら
「マスターだってそのつもりでしょ。だから自分がブーケ作るって言い出したんじゃないの」
「えっ?」
「綾ちゃんの場所ちゃんと残しとく為じゃないの?」
あ……と、思い当たる節に顔を上げた。
新しいバイトの子は、できるだけホールに専念してもらいますから、と一瀬さんが言っていた。
勿論、その子が長く勤めてくれれば、ずっとそういうわけにもいかないだろうけど。
「そうだったら、嬉しいな」
もしも一瀬さんが本当にそう思ってくれたなら。
にへにへと顔が緩むのがこらえられなくて、両手で頬を覆っていると運転席から「あーあ」とわざとらしい溜め息が聞こえた。
「綾ちゃん、振られたって言ったくせに。なんか、そのあとの方がいい雰囲気なんじゃないの?」