君と花を愛でながら
「以前、こういったことに詳しい知り合いがいまして」


そう言いながら、珈琲を一口含んで間を置く。
だけどすぐにブーケの話を始めたから、気のせいだったのかもしれない。なんだか、聞いてはいけないことを聞いてしまったような、気がしたのだけど。


「しかし、パンジーはブーケには向きませんか? 草花ですし……」


そう聞かれて、私は漸くブーケの方へ思考回路を集中させた。


「いえ、そんなことは。色も豊富にあるし、華やかでいいかも。水揚げさえ上手くいけば……」


フリルパンジーなら見栄えもするし、と頭の中でイメージした。
ただ、パンジーは水をたくさん吸うから……そこをなんとかすれば。


それに、パンジーの花束をどこかで見た記憶があった。


「調べてみます! バレンタインにちなんだ花だと聞いたら、是非使いたくなりましたから」


そういうと、一瀬さんはほんの少し口角を上げて、笑ってくれたように見えた。


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