君と花を愛でながら
「静さん……ずっと、待ってたんですよ?!」



お客さんがいないこともあり、つい声を荒げる私に、彼は眉を顰める。
だけど完全に頭にきていて、何も見えなくなっていた。


私はレジ横に置いてあった静さんに託された花束を手に取ると、彼にやや乱暴に押し付ける。
ピンクの花びらが一枚、彼の足もとにひらりと落ちた。



「な、なんだよこれ」

「頼まれたんです! せめてそれくらい受け取ってあげてください」



たかがカフェの店員に、なぜこんなことを言われなければいけないのか……不服そうに顔を歪めたのは、なんだかそれだけでは無さそうに見えた。


どこか、ばつが悪そうな表情にピンと勘が働く。
わざとなんだ、やっぱり。



「なんで……なんで約束守らなかったんですか? 大事な話って言われてたのに、なんで聞いてあげないの?」

「……うるさいな。なんなんだ、たかが店員に言われる筋合いないよ」

「す、すみません、でもっ」



じゅん、と目頭が熱くなる。
聞いて欲しい言葉を、伝える機会をはぐらかされる。


その惨めさを私は知ってるから……感情移入するなって方が、無理だよ、片山さん。


あと少しで涙が零れてしまう。
きゅっと目頭に力を入れた時、ふいに腕を後ろから掴まれた。



「えっ……」



引かれるようにして身体が一歩後ずさり、同時に一瀬さんが私の一歩前に立った。

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