君と花を愛でながら
「従業員が大変失礼致しました」

「あ……」



さっと、血の気が引くのがわかった。


一瀬さんが腰を折る後姿を見て、ようやく我に返る。
やってしまった、と口元を手で覆って、自分の手が震えていることに気が付いた。



「いや、別に頭下げてもらうほどの事じゃないけどさ」

「申し訳ありませんでした。その花束を預かった手前、気が気じゃなかったようで……」

「はは、まあそういうことにしといてもいいけど」

「お会計は頂いておりますので、お受け取り頂いてもよろしいでしょうか」



一瀬さんの背中でただただ後悔から震えているしかできない私の前で、そんな会話が続く。
どうやってお詫びしよう……そればかり考えていて頭は混乱しかけていたけれど。



「……それにしても、なんでピンクのバラなんだか」



呆れたような声でそう聞こえ、はっと顔を上げた。
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