君と花を愛でながら
「静っ」



突然、そう名前を呼んで踵を返す。
今にも店から飛び出そうとする聡さんを、思わず呼び止めてしまった。



「あのっ? 静さん、大丈夫なんでしょうか?」



振り向いた聡さんは落ち着きない表情で、引き留めたのことを一瞬申し訳なく思ったけれど、私だってこのままじゃ何がどうしたのか気になって仕方ない。



「ああ、大丈夫、うん。すぐ、捕まえなきゃ」



あれだけ余裕綽綽として、他の女の人と遊び歩いてた人となのに。
同一人物とは思えないくらい、聡さんはあたふたとそう答えて。



「ありがとう、綾ちゃん!」



と、ピンクのバラを掲げて今度こそ店を出て行った。
名残にはらはらと、ピンクの花びらを残して。

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