君と花を愛でながら
「あ……」



ひや、と背筋が寒くなるくらい、怒っているのがよくわかる声だった。
同時に、さっきの一瀬さんの背中を思い出して、私は慌てて頭を下げた。



「す、すみませんでした、私っ……」

「いくら静さんと仲がいいからって、静さんも聡さんもお客様です」

「はいっ……」

「それに相手が感情的にならなかったから良かったものの……」



頭を下げ続ける私に、上から落ちてくる溜息。
そうだ、もしも聡さんを完全に怒らせていたら……誰かに話して私のせいでお店の悪評になったかもしれない。悪い噂なんて、あっという間に広がってしまう。


そんなことに今更気が付いて情けなくて、お辞儀をしたまま下唇を噛みしめる。



「もしも、綾さん一人の時に何かあっ……」

「仕方ないだろ、元々最初っから綾ちゃんに絡んできてたの向こうだし」



一瀬さんの言葉を遮ったのは、片山さんの声だった。
驚いて顔を上げるとぱちりと目が合って、彼がにっこりと口角を上げた。


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