優しい彼は残酷な人。
それから、朔は彼女のもとへと私の部屋を出ていった。
私はひとり、部屋に取り残された。
「...彼女いたんだ。」
あんな容姿じゃ嫌でも女はほっとかないだろう。
考えると、彼女がいて当たり前だ。
逆にいないほうが可笑しいくらいだ。
__私と朔はきっと
これっきりもう会うこともないだろう。
朔にとって私は、『一度きりの関係』という
大勢の女の中のひとりにすぎないのだろう。
そして、時が経ったら私のことを憶えてることなく
どこがですれ違っても彼は気付かず、
もちろん、振り返ることもなく行ってしまうのだろう。
そんなことを考える自分が可笑しくて、私の乾いた笑い声だけが部屋に響いた。