優しい彼は残酷な人。
朔と会ってから一週間と少し過ぎた頃、突然私の携帯は鳴った。
それは知らない番号で、
私は少し躊躇いながら通話ボタンを押した。
「...もしもし?」
「俺、朔。」
聞こえてきたのは、聞き覚えのある朔の声だった。
「....なんで、番号知ってるの?」
私は疑問に思ったことを口にした。
すると、彼は悪気が全く無さそうに笑って言った。
「....沙羅が寝た後、こっそり番号見ちゃった。」
「....そんな、勝手に。」
私は嬉しさを隠し、怒った振りをした。
「...ごめん。....ねぇ、今から会わない?」
そう言った朔はきっと見えないけれど、電話越しで悪戯っ子のような笑顔をしているのだろうと思った。