優しい彼は残酷な人。
私は仕方なく、ざっと支度をしてドアを開ける。
そこには車に背をあずけて立つ朔の姿。
そして、こっちを見て、優しく笑うのだ。
「....来てくれないかと思った。」
そんな思ってもなさそうなことを言う朔。
「....来ると思ってたくせに。」
私はそう拗ねたように言うと、
朔は、否定も肯定もせず、ただ微笑んだ。
そして
「.......おいで。」
そう言って朔は私に手を差し出した。
私は諦めて、朔の温かい大きな手をとった。