純情喫茶―恋する喫茶店―
(また負けた…)

谷木と抱きあった玲奈は悔しさで胸がいっぱいだった。

そんな彼女の気も知らず、谷木は横で寝息を立てている。

ベッドの下に敷かれているじゅうたんのうえには、数時間前に着ていたバスローブと下着が散らばっていた。

いつもあのセリフで負けてしまう。

(なーにが声を出してくれよ!

なーにが腰を振ってくれよ!)

そのセリフに負ける悔しさに腹が立って、玲奈は拳で枕をたたいた。

でも…と思いながら、玲奈は谷木を見た。

相変わらず、寝息を立てて眠っている谷木がそこにいた。

勝ち誇ったような顔して眠っているような、ちゃんと“愛してる”と言っているような寝顔。

やっぱり、自分は一生をかけても彼に勝てないのかも知れない。

ちょっと悔しいような気もするけど。

「私って、ホントに弱いなあ」

玲奈はそう呟くと、谷木の頬に軽くキスをした。
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