純情喫茶―恋する喫茶店―
彼女の華奢な手は、大事そうに茶色の紙袋を抱えていた。

「いらっしゃいませ」

玲奈が谷木に向かって会釈をした。

「おう、お帰り」

ナポリタンを片手に笙がカウンターに顔を出した。

ナポリタンとフォークを谷木の前に置くと、カウンターを出て玲奈の方に歩み寄った。

「駅前のベーカリー、結構混んでたよ」

笙に紙袋を渡すと、玲奈が言った。

「そう、お客様がコーヒーを1つって」

そう言った笙に、
「わかった、先にお昼をべていいから。

それと、メロンパンと焼きそばパンを残してね」

玲奈は言い返した。

「はいはい」

笙は紙袋を片手に、また店の奥へと消えて行った。
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