純情喫茶―恋する喫茶店―
「まあいい、あんたに頼んだ訳じゃなかったから」

谷木は指で自分の隣の席を指差したので、玲奈は訳がわからないと言うように首を傾げた。

「隣に座れって」

谷木の命令に玲奈は息を吐くと、彼の隣に腰を下ろした。

「実を言うと、また同じ脚本家の映画に出演するんだ」

「おめでとうございます」

谷木は食べ終わったばかりの皿にフォークを置くと、
「ただ1つだけ気に入らないことがあるんだ」
と、言った。

「役が気に入らないとか?」

そう聞いた玲奈に、
「いや、役は特に問題ないんだ。

ただ、セリフがね」

谷木は言いにくそうに答えた。

「セリフ?」

「長ゼリがね」

そう答えた谷木に、玲奈は訳がわからないと言うように首を傾げた。
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