純情喫茶―恋する喫茶店―
「役だけもらっておいて、努力しない役者様は嫌いです」

そう言った玲奈に、谷木が視線を向けてきた。

「あんた、怒る時も冷静なんだな」

コーヒーをすすりながら、谷木が言った。

「私はあなた様みたいな役者様が嫌いだと言っただけですが」

そう言った後、玲奈はプイッと横を向いた。

「気に入ったよ」

玲奈の前にコースターが現れた。

コースターを持っていたのは、谷木だった。

「ここにアドレスが書いてあるから」

谷木の手からコースターを受け取ると、確かに彼のアドレスが書いてあった。

「お代はここに置いておくから」

谷木が店を出て行った。

空になったナポリタンの皿を見たると、皿の下に千円札が置かれていた。
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