純情喫茶―恋する喫茶店―
「何だお前」

男が笙をにらみつけてきた。

「何だお前って、通りすがりの者なんですけど」

特に動じることなく言い返した笙に、
「通りすがりでもこのドロボーをかばう気か!?」

男が言った。

「かばう気かって、彼女は違うって言ってるじゃないですか。

あなたこそ、彼女に窃盗の濡れ衣を着せてお金を取るつもりなんですか?

それこそ、ドロボーじゃないですか」

そう言い返した笙に、
「とにかく、俺は財布を盗まれたんだ。

ここに入れていたはずの…あった」

どうやら、男の勘違いだったらしい。

「すまねえ!」

男は頭を下げると、逃げるようにこの場を去った。
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