純情喫茶―恋する喫茶店―
Ｍｅｎｕ３

結婚しない

ムスッとした不機嫌な顔で、玲奈はコーヒーを煎れていた。

カウンターの席で、谷木が頬杖をついて彼女のそんな様子を見ていた。

「何ですか？」

不機嫌な低い声で、玲奈が谷木に尋ねた。

「んー、この間から何か不機嫌だなって思って」

谷木と一夜を過ごした一件以来、玲奈は不機嫌な状態が続いていた。

「まあ、そうカッカするな。

何もなかったんだし」

何もなかったとは言え、一夜を過ごしたことには代わりはない。

ますます不機嫌度が高くなった玲奈は、コーヒーが入ったカップを手に持った。

（冷静にならなきゃ…）

玲奈は自分自身に言い聞かせるように呟いた。

谷木はそんな玲奈の反応を楽しむように、
「それに、同じベッドで寝た中だろ？」
と、からかうように言った。

ガシャンと、手の中のカップが砕けた。

「何してるの！？」

その音に驚いたと言うように、笙が現れた。
< 49 / 117 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop