純情喫茶―恋する喫茶店―
谷木に連れられるように、玲奈は彼のマンションに行った。

マンションにきたのは、あの休日以来だった。

「――広い…」

さすが芸能人だと、玲奈は心の中で呟いた。

自宅も兼ねている自分の喫茶店とは大違いである。

そんなことを思っていたら、コトンとテーブルのうえに氷の入ったグラスが置かれた。

玲奈はグラスを手に取ると口をつけた。

口の中に広がったその味に、玲奈は驚いた。

「どうした?」

そう聞いてきた谷木に、
「アールグレイ、ですか?」

玲奈は聞き返した。

谷木は笑うと、
「正解」
と、言った。

「どうして…?」

呟くように聞いた玲奈に、
「調査結果を見た時に知ったよ。

あんたが勉強のために、あちこちの喫茶店で働き回っていたことを」

そう答えた谷木に、玲奈はグラスをテーブルのうえに置いた。

「どんな理由だかよくわからないけど、結構頑張ってるんだな」

「――探すためなんです」

玲奈は呟くように言った。
< 81 / 117 >

この作品をシェア

pagetop