本当の答え
「香奈……色々…大丈夫か?」
「うん…ありがとう翔汰。なんでこんな事になったのかな?」
「…わから…ない」
「そうだよ…ね。うん…わかるわけ…ないよ…
はぁ………
こんな事になっちゃったら生きていられても…いい気持ちは…しないね」
「そうだな…でもだから…こそ」
 翔汰は最後まで話さなかった。
 私も、無言で頷いた。
 翔汰が言いたいこと。伝えたいことは、だいたい分かる。
 だから、言葉なんていらない。
 私と翔汰の仲には、そんなものきっと必要ない。
 言葉にしなければ伝わらないものもあるだろう。それでも、今の私達には目を合わせるだけで十分すぎるくらい伝わった。
「ねむ…い」
「寝ていいよ。30分ちょっと前くらいなったら起こしてやるから」
「…………ん」
 私は、翔汰に身を預け、目を瞑った。
 本当は眠くない。ただ思い出していた。
 翔汰と初めて会話をした時のこと。昔のことを。
 私は、いつも一人だった。
 友達がいないだとか、そういう意味の一人ではないから、「独り」の方が正しいのだろう。
「香奈……寝たの?」
「…………」
「フッ…早いな」
 ただ、皆の機嫌を見て、適当に笑顔を張り付けて、愛想笑いしてみる。中身は空っぽな人生。偽りの毎日。心から関わることを嫌っていた。
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