本当の答え
 翔汰に出会うまでは、次第にそれが当たり前になっていた。
《渡瀬。お前なんなんだよ》
 見目翔汰。
 この人に言われてから、私の人生は180度変わった。何もかもが正反対で指摘ばかりされていた。
 面白いと思った。
 目を合わせて、ワクワクした。
 私の表情を見抜く事ができる人がいるんだと思ったらゾクゾクした。
 案外つまらなくないのかもと思えた。
 人と関わる事を拒んだ理由なんてのも、とても簡単で単純だった。
 いじめ。
 ただそれだけだ。
 人は醜く汚いものなのだと知ったから。
「バカ」
「うざい」
「消えろ」
「カス、グズ」
「殺してやる」
「死ね」
 暴言の嵐。
 悲しいほど変わらない。
 人なんか絶対信じられないものなのだと理解したから。もちろん今もだ。
 いくら翔汰の【温もり】【愛情】【優しさ】【笑顔】に触れたとしても、嫌なことは嫌なことに変わりないのだ。
 皆が笑っていられる世界なんて、そんな馬鹿げた未来なんか来るわけがない。
 いくら地球が変わったとしても、いくら情報網が発達したとしても何も変わらないだろう。
 今日も誰かが泣いた。
 今日も誰かが怪我をした。
 今日も誰かの命が儚く散った。
 それなのに、この世界のことを、人は皆平和と言うのだ。
 ありえない。
 誰かの幸せなんて、誰かの不幸で成り立っているんだ。
 そんな人が怖くて仕方ない。私自身だって信じることはできない。
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