本当の答え
「落ち着いていられるわけない。こんな状況なんだ。仕方ない。
まとめようとしたってむりだろうよ。
返って渡瀬が飛び火をくらうだけだ。
火傷したくないだろ」
 ‘落ち着いてられるか’なんて言ってる和樹の口調は、驚くほど落ち着いていた。それでも、手は震えていた。
「うん…心配してくれてありがとう」
 それだけ言って、私は自分の机を廊下があった場所に中身を出した状態で運んで行った。
 ずりっずりっと言う音に皆気づいたのか、不思議そうな顔をして見ていた。
 そんなことは気にせず、黒い渦の廊下に机を突き落とした。
「なっ!!?」
 周りの人は唖然としていた。
 バカじゃないのと言いたげな顔で私を見ていた。
「そんな顔で見ないでよ…中身はちゃんと出したんだからさ…。
ただ…この黒い渦…黒い霧かな。それが果てしないものなのか試しただけだよ。机が床に当たった音がしないから…多分…。」
「多分何なんだよっ!?早く言えよっ」
「っ……。
徳哉くん。静かにしてくれると嬉しいな。
この黒い霧…〈black a mist〉は…きっとどこまでも果てしなく続いてるんだと思う。」
 私の話に皆、絶望していた。
 もう数分前の楽しそうな笑い声は聞こえなくなってしまった。
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