こっちを向いてよ、ダーリン!

降りるって言ったって……。
こんなところで困る。


「おい、何してんだよ」


今度はドアを開けて、私を急かす。


「弁当の礼に、旨いパフェを御馳走してやる」

「病院でパフェ、ですか?」

「なんだよ、不満か」


そりゃ、そうですよ。
だって、病院だよ?
美味しいものが食べられると思うわけがない。


「いまどきの病院のレストランをバカにするなよ。そこら辺のよりずっと旨いんだぞ」

「遠慮しておきます」


それに、圭くんがいるところに今は近づきたくない。


「私、帰ります」

「え?」

「どうせなら、病院じゃなくて、別のところで御馳走してください」


そそくさと降り、失礼しますとばかりに頭を下げた。

先生は、「ま、いいけどね」と一人呟き、「気を付けて帰れよ」なんて、私の背中に言葉を投げた。



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