こっちを向いてよ、ダーリン!
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「それで、またここに転がり込んできたわけね」
当面の荷物を取りに部屋に帰った後、再び来てしまったのは、やっぱり茜のところだった。
私には、ここしかない。
茜は、起きぬけの格好で、ふわぁと一つ欠伸をした。
「コーヒーでも淹れるね」
勝手知ったる茜の部屋。
お昼も間もなくだというのに、未だ眠そうにソファに深く腰を下ろす茜に代わって、キッチンに立った。
といっても、インスタント。
カップにお湯を注ぐだけなのだ。
「しばらくの間、ここに置いてください」
湯気の立つコーヒーカップをテーブルに置き、正座をして仰々しく頭を下げる。
「そのセリフ、一体、何度聞けばいいのかしらねー」
「お願い、何でもするから」
出て行っては、また戻る。
自分勝手は分かっているけれど。
両手を顔の前で合わせて、茜を拝み倒す。
私にはここしか行く場所なんてないのだから。
「ま、圭くんに振られて可哀想だし、仕方ないからいいわよ」