こっちを向いてよ、ダーリン!

面と向かってそんなこと言われたの、初めてだわ。


だいたい、あの先生、最初の印象と全く違う。
初めは、優しくて知的な、包容力抜群の男に見えたのに。

それが、会うたびにズケズケと物を言う、デリカシーのない人になっていくんだから。


「でもそれって、放っておけないって意味なんじゃない?」

「なにそれ」


どこをどうしたら、そこがイコールになるわけ?

茜の思考回路も、だいぶトチ狂ってきたのかも。


「だって、私がそうだもの。沙羅ってホント面倒くさいところがあるんだけど、どういうわけか放っておけないのよ」

「……茜までヒドイ」

「滑ったの転んだのって、毎日忙しいじゃない」

「滑ってもいなければ、転んでもいません」

「言葉の綾よ」

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