こっちを向いてよ、ダーリン!
振り切るように足を速めてみても、車に勝てるはずもなかった。
「もうっ、いい加減にしてください」
圭くんとの最後の時間を邪魔された腹いせなのか。
それとも、単なる強がりなのか。
自分のことなのに、全然分からなかった。
執拗に追い駆けて来る、車のフロントガラス越しに睨みを効かせる。
それなのに、先生は全く動じていない顔で、車から素早く降りて来てしまった。
「人の好意はありがたく受け取れ」
「有難迷惑です」
「素直じゃないなぁ」
そんなこと、先生に言われたくない。
「こんな夜くらい、一人にさせてください」
「一人で泣くつもりか?」