こっちを向いてよ、ダーリン!
「……そんなこと、先生には関係ないじゃないですか」
「関係なくても、一人で泣くよりはマシだと思うぞ」
――えっ!?
先生は、片手で私の頭を引き寄せると、そのまま自分の胸に押し付けた。
抵抗しようと身体中に力が入ったのは、ほんの一瞬だった。
先生にトントンと背中を叩かれたのが発車の合図のように、涙がツーっと頬を伝わる。
泣くつもりなんてなかったのに。
圭くんと決別したというのに、気分的に意外とあっさりしたものだと思っていたはずが。
それは大きな間違いだったことに気付かされた。
あの家を本当に出て来てしまったのだということを今更ながらに実感して、胸が苦しくて仕方なかった。