こっちを向いてよ、ダーリン!
「圭くん! もう出かけるの?」
出て行けと言ったのは私のくせに、仏頂面でドアを閉めかけた圭くんを引き止めた。
肝心なことを思い出してしまったのだ。
「遅刻ギリギリだ」
「ご飯食べてないでしょ?」
「沙羅が寝坊したからな」
言われるとは思ったけれど、意地の悪い顔をするから素直に謝れない。
「だって、圭くんが悪いのよ」
言いがかりも甚だしいけれど。
「なんで俺が悪いんだ?」
だって、夢であんなことするから。
なんていう言い訳は、もちろん通用しない。
圭くんの預かり知らぬところなのだから。