こっちを向いてよ、ダーリン!

◇◇◇

あまりにもサラリと描かれた地図は、容易に辿り着けない不安を煽ったけれど、それは余計な心配に終わった。

最寄駅から歩いて3分もかからない、大通りに面したところに“陽だまり”を見つけたのだ。


右隣には、北欧雑貨のお店。
左隣には、エステサロン。

こげ茶色のレンガ造りの店構えは、両隣の店にマッチした落ち着いた雰囲気だった。

もう一度看板を確認して、ドアをゆっくりと開ける。
すぐに鼻をくすぐったのは、コーヒーの香りだった。



「いらっしゃいませ」


よく通る明るい声が出迎える。
見ると、それはショートカットがよく似合う、50代くらいの女性だった。

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