こっちを向いてよ、ダーリン!

「あの、すみません……アルバイトを募集していると紹介されて来たのですが……」


言うなり、その女性はパッと顔を輝かせた。


「健二くんね? 聞いてるわ。えっと……確か、」

「森山沙羅です」

「そうそう、沙羅ちゃんね。早速来てくれてありがとう」


人懐こい笑顔にホッとする。

女性は「ちょっと待ってね」と私に告げると、カウンターの奥の方へ向かって声を掛けた。


「あなたー、ちょっと来て」


その声に呼ばれて出て来たのは、多分こちらも50代。
スラリとした長身で、清潔感のある男の人だった。

この人がこの店のマスターらしい。

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