こっちを向いてよ、ダーリン!
「ほら、健二くんが言っていた、」
「ああ、うんうん、例の女子大生だね」
二人で確認し合うと、穏やかな笑みで「よく来てくれたね」と私を迎え入れてくれた。
「森山沙羅です。突然のお願いで申し訳ありません」
「いや、ちょうど働いてくれる人を探していたんだよ。そうしたら健二くんが、適任者がいるから紹介するって言ってね」
マスターは「君がそうだったんだね」と言いながら、しばらくの間、私のことをじっと見つめた。
接客業を長くやっている人ならば、少し接しただけでその人の内面を見抜くことができるかもしれない。
マスターの視線に、身体中に緊張が走る。
「不合格」だと言われるんじゃないかと、ハラハラした。
「……あの、履歴書を用意して来てないんです」
「ああ、そんなものはいらないよ。何せ、健二くんの紹介だからね」