こっちを向いてよ、ダーリン!
「それじゃ、面接は……」
「やらないよ。採用決定」
マスターは両腕を使って、大きく丸を作った。
先生は、よほど信用があるらしい。
お調子者みたいなところはあるけれど、意外と信頼に足る人間性の持ち主なのかもしれない。
「僕は小野博、この店のマスター。それで、こっちが、」
「小野亜紀です。よろしくね」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
深く頭を下げる。
遅ればせながら、一人立ちへの第一歩を踏み出すことができた午後だった。