こっちを向いてよ、ダーリン!

ぼんやりそんなことを思い出していると、布団の中から出された圭くんの手が、何かを探すように宙を舞った。


「……さ、ら」


微かに動いた唇から聞こえた言葉に耳を疑った。

ドキドキと高鳴る胸。

“沙羅”
そう聞こえたような気がしたけれど。

……まさかね。
そんなわけがない。


「……沙羅」


否定した矢先に、もう一度開いた唇。


「……圭、くん?」


思わず、その手を握る。

< 173 / 276 >

この作品をシェア

pagetop