こっちを向いてよ、ダーリン!

「おーい、沙羅ちゃん!」


後ろから私を呼ぶ声に茜と振り返ると、先生が大きく手を振りながら小走りでやってきた。


「この前は悪かったね。助かったよ。おかげで看護師長に大目玉食らわずに済んだよ」


病院に届けた書類のことらしい。
先生は肩で息をしながらニッコリ笑った。

先生の恐れる看護師長って、一体どんな人なんだろう。
この前も怒られるからとか何とか、言ってたような気がするけれど。


「亜紀さんに頼まれただけですから」

「冷たい言い方だなぁ。ねえ、茜ちゃん」


憐れみを含ませて、クスクスと笑う茜。

つい、意地悪く言ってしまうのは、先生に対する私の条件反射みたいなものだ。

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