こっちを向いてよ、ダーリン!

「返してください」

「何を?」

「何をじゃないです。私の携帯です」


今日ここへ来た目的をうっかり忘れそうになっていた。


「うーん、どうしようかな」


完全に私をおちょくってるとしか思えない。
先生は、腕組みをしておどけてみせた。


「もういい加減にしてくださいよ。私なんかに構ってないで、大好きだっていう年上の女の人のところに行けばいいじゃないですか」

「誰が、年上を大好きだって? それは圭だろ?」

「なんでもいいから、とにかく携帯を返してください」


実のない言い合いをしていたら埒があかない。
さっさと携帯を返してもらって帰ろう。

右手を先生に向かって突き出した時だった――……

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