こっちを向いてよ、ダーリン!
身構える私とは対照的に、余裕綽々な彼女。
「坂下真奈美といいます。伊沢くんと同じ会社に勤めてるの」
そう言うと、バッグを漁り
「これを沙羅さんに渡しに来たのよ」
取り出したのは腕時計だった。
去年の誕生日に、私が圭くんにプレゼントした腕時計。
どうしてそれが彼女の手にあるの?
どういうことなのか、さっぱり見当もつかない。
不思議顔をする私に、彼女が更に告げた。
「この前、伊沢くんが私の部屋に忘れて行ったのよ。会社で返しても良かったんだけど……一度あなたに会っておこうと思って」