こっちを向いてよ、ダーリン!

さっきと同じセリフを繰り返した圭くんに、先生は大きく溜息を吐いた。


「悪いけど、それはこっちのセリフだよ」


そして、圭くんに掴まれた手をサッと払った。


どうして先生が私にキスしたのかも。
どうして圭くんがここにいるのかも。
どうして圭くんが先生に怒っているのかも。

全部が全部、分からなかった。

置かれた状況を飲み込むには、ショッキングなことが重なり過ぎて、頭がついていけなかった。


そして、訪れた沈黙の中、イヤなことをふと思い出してしまった。


私、見られたんだよね……?
先生にキスされたところを圭くんに見られたんだよね?


今更、急加速を始める鼓動。

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